2017年3月号BASEBALLクリニック

今回は、足関節と投球動作の関係を「てるクリニック」院長の照屋先生と同クリニック理学療法士である玉城さんに説明してもらいます。

『投球動作は、つま先から指先までの全身運動であり、身体の捻りや重心移動によって蓄えられたエネルギーを各関節の連鎖運動により増強し、最終的にはボールを投げるということに集約させるものである。従って、その障害は肩関節にのみ起因するものでなく、足、膝、腰、体幹、肘などすべてに関係している。』と、定義されています。投球動作は全身運動であるので、痛みのある部位だけでなく、体全体を考えないといけません。
今回は、足関節と投球動作の関係をお伝えします。

足関節は表面から見てもわかりませんが、多くの骨によって成り立っています。足関節からつま先の骨は全部で26個(片方のみ)あります。その中でも大きな骨は、踵付近にある踵骨(しょうこつ)と距骨(きょこつ)です。この骨は体重を支える割合が大きく、右投げの投球動作で考えると、ワインドアップ相(wind-up phase)での右片足立ちの時の安定性、そして左足をあげて地面につく瞬間(フットプラント)の左足への重心移動に大きく関係します。(肩・機能と臨床から画像抜粋)

沖縄スポーツリハビリ野球肩野球肘

では、右投げの場合の右足から少し細かくご説明します。ワインドアップ相での右片足立ちは、前方へのタメを作る重要な時期と言われています。この時に右足関節が安定せず、右の片足立ちが安定しないと、体全体がグラグラとなり上半身のテイクバックが思ったように動かせません。
また、右足首周囲が硬く柔軟性に乏しいと、右片足立ちで立てる時間が短くなり、左足のフットプラントするまでの時間が短くなることで、意図しないインステップに繋がったり右足と左足の幅が狭くなることもあります。

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右投げの場合の左足は、前方への重心移動において大切です。足関節が硬く背屈(足首を曲がること)できないと、せっかく勢いをつけたのに左足でブレーキをかけることになります。また、左足が不安定だと、意図せず膝が外側や内側に倒れることで前方への重心移動が不十分になり、ボールをしっかり押し込めなくなり、上半身で無理な横ぶりをしないといけなくなります。

足首の問題は、アキレス腱などのふくらはぎ周囲の柔軟性が乏しい場合や、現代は昔に比べて畳での生活が減り、和式トイレでしゃがみ込むような動き、つまり足関節をしっかり曲げる機会が少なくなり、足関節に硬さが出るとも言われています。また足首の捻挫をし、適切な治療ができなかったことで後遺症として硬さが残ることも考えられます。

体は日常生活の積み重ねで作られていますので、生活様式の変化や怪我後などを自主トレなどで補えたらいいと思います。
足の安定性を確保するために、インソールも作製することもあります。その場合には、その選手個人個人で異なるため、歩行や投球動作、足の形やサイズなどに合わせて作製することが大切です。靴の履き方によって足自体の安定性も変わりますので、靴の履き方から気をつけましょう。靴の踵を踏んで潰したりすると、いざしっかり履いても靴自体の傾きから足が傾き、体も傾いてしまうかもしれません。グローブ、バット、ボールと同じく靴も大切に扱ってほしいと思います。
痛い部位以外に本当の問題があるかもしれないと考えると、投球する前から投球動作が始まっていることが分かります。日常生活から投球動作を考えていきましょう。簡単ではありますが、足関節と投球動作の関係性についてをお伝えしました。

てるクリニック
理学療法士 玉城潤

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